番長購入
「よし」
今日は体育館で「番長」を買いにきた。300円でと登録ができて、市町村が正式に発行しているんだとか。
「おじさんこれでこの街の番長はおれか?」
「そうじゃのー」
ど真ん中にちょこんと座っているおじちゃんに適当に返事をされた。もうやることはやったので部活に戻った。部活は特に何もなく終わった。
「竹内さんお疲れ様です」
竹内さんも顧問で、今帰りのようだ。竹内さんは自分の持っているズボンを指差し言った。
「それ俺のかな?」
自分の持っているものが竹内さんのものかは分からなかったが、そう言われるとそんな気がしてきた。普段は固定電話のボタンに自分のシールを貼り、ロッカーの場所がわかるのだが、今日は自分のシールがどこにも貼ってない。故にこのズボンは自分のでいいと思った、いや、めんどくさいからこれであってくれと思ってしまった。
「いや、僕のですよ」
竹内さんにそういうと、持っているズボンを履いて帰ろうとするとあることに気づいた。固定電話には使わないボタンに「使わない」と書かれたシールが貼ってある。もしやと思いそのシールを剥がしてみるとその下には自分のシールが貼ってあった。おそらく昨日剥がし忘れたためここに貼られたのだろう。
「竹内さんごめんなさい」
急いでズボンを脱いで竹内さんに渡した。
「そうやろ」
竹内さんは怒らず受け取ってくれた。なんて優しいんだ。
自分のズボンも無事見つかり、帰ろうとすると黒い制服を着た少女が目の前に現れた。
「おい、テメェ!なんだよ、おい」
何故か怒っているようだ。すごい形相で睨みつけている。戦いは好まないタイプなのだが、生意気な小娘にこのまま引き下がるのもしゃくなので、ちょっと話だけでもしてあげた。
「おう、この番長に何の用だ、あぁ?」
「番長?!」
相手が驚いている。ちょっとびっくりしたが、まぁ番長なのだし当然なのだ。自分は胸を大きく貼り相手を見下した。
「そう、300円で番長買ったんだよ」
「?!」
自分の後ろにいきなり現れた二人の双子の少女はいきなり言ってはいけない事を喋ったため、非常に驚き冷や汗が出てきた。恐る恐るヤンキーに目をやると、ヤンキーはさらに驚いた様子で問いかけてきた。
「番長は買えるのか?!」
「そうだよ300円で買えるよ」
双子の少女が即答してしまい何も喋れなかった。
「(おい!)」
ヤンキーは何やら考え事をしているようだ。
「こいつ馬鹿なのか」
おそらくこのヤンキーは、「番長」を買うかどうか真剣に考えている。だがそうなるとどっちが番長なのかという話になるはず。そう考えると、とても憂鬱になった。ヤンキーが番長を買う事を決めるような気がしてならないので、この待ち時間は地獄だと感じた。
「(帰りたい・・)」
・・・起床
番長買えるんかい